メンタル不調が厳しい業界

IT業界のメンタル環境

■IT業界のメンタル環境

成長が著しい花形産業のIT業界ですが、職場のストレスは、他業界に比べかなり厳しいです。

IT技術者のSE(システムエンジニア)のうち20%はうつ病に悩んだことがあり、他業種の3倍~5倍といわれてます。

ドッグイヤー(情報産業における技術革新など変化のスピードが速い) と呼ばれるように、
技術開発のスピードが速く、技術者は納期に追われ、管理職は短時間で次々と
意思決定することを要求されるというのは、この業界では普通の状態です。

最先端技術であり、目が見える形で次々と世に中を変えていく業務に、誇りを感じる反面、
少しでも気を抜くと、その変化のスピードに比例したような疲労の蓄積が襲ってきます。

成長産業であっても、高度な技術の習得が必要なSEの人手不足が常態化し、
人数が足りなければその分は、今いる人が、
残業をして補うよりほかありません。

IT技術者によくみられるストレス要因には以下のものがあげられます。

・完璧主義が多い
・人手不足により長時間労働で休めない
・顧客からの強いプレッシャー
・円滑でないコミュニケーションや人間関係
・周囲をコントロールできない

メンタル不調とは、独立行政法人労働者健康安全機構が出している
「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
によると、以下のように定義されています。

「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、
ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活
および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」

厚生労働省の発表する毎月勤労者統計などから推定すると、IT業界従事者の年間残業時間は約240時間。
全産業の平均が120時間ですから、これはその2倍ということになります。

「平成29年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタル不調により
連続1カ月以上休業した従業員は全体で 0.4%・産業別にみると、IT業界が含まれる
情報通信業が3倍の1.2%と、最も高い割合になっています。

2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」に基づく「過労死等防止対策白書」
が厚生労働省より2016年に初めて公開されました。

正規雇用従業員(フルタイム)の月間時間外労働時間が20時間超と回答した企業の割合は
情報通信業では53.7%となっており、業種全体の平均値 (25.4%)を大きく上回っています。

また、1ヶ月間での最長時間外労働時間に関しての調査では、
80時間を超えていると回答した企業の割合が一番多かったのが情報通信業 (4.4%)。

このように、常に緊張した状態で長時間労働を強いられるのですから、
心身に不調をきたす人 が多数現れるのも無理はありません。

実際、日経ITプロフェッショナル誌が特集のために、
ウェブ上でITエンジニアを対象にアンケート調査を実施したところ、
「医師によつて心身の不調と診断されたことがあるか」と いう問いに対し、
「ある」という答えが、2706人の有効回答のうち2割もありました。

関連した質問で「心の病だと感じたことがあるか」
「心の病になった人を勤務先で実際に知っているか」
という質問にも、「イエス」と答えた人はそれぞれ55%、75%でした。

IT技術者に多くみられるメンタル不調の代表的なものは、うつ病やアルコール依存症、
適応障害などです。

ただし、IT技術者がいきなりそのようになるわけではありません。

SEの仕事というのは、ひたすらプログラムを書くので、そこには営業のような人間関係ストレスは少ないようにみえます。

しかし、管理職になると、部下の指導や評価、願客との対外交渉といった、
コミユ ニケーションスキルが必要な役割を求め られるようになります。
そうすると、途 端にストレスが増し、うつ病を発症しやすくなるのです。

さらにもともとコミユニケーションか苦手な人がSEやITエンジニアに多いというのも、
IT業界のうつ病発症率が高いもうひとつの理由だといつていいでしょう。

今まで好きだったことに対しても、集中できない興味や関心がわかない、
眠れない、夜中や早朝に目覚める、食欲がない、動悸がする、 遅刻、早退が多い、
突然の有給休暇取得や無断欠勤がある、 身だしなみに気を遣わなくなった。

メンタル不調のサインは「こころ」と「からだ」と「行動」に現れると いわれています。
そうしたサインを見逃さないことが大切です。

一方、会社側も決して手をこまねいているわけではなく、
とくに最近は過労死に対する雇用者貴任が厳しく追及されることもあって、
IT業界のメンタルへルス対策はここ数年で追いつき、 他のどの業界より進んでいるといってもいいのですが、
もともとメンタル不調が、他業種に比べて3倍以上の業界ですから、
メンタル対策も3倍以上ほどこさなければ、いけないのではないでしょうか。

金融業界のメンタル環境

■金融業界のメンタル環境

銀行や証券、保険会社などからなる金融業界は、堅実で安定しているというイメージから、
学生の就職先としても根強い人気があります。

しかし、バブル崩壊以降、いわゆる金融ビッグバン によって
それまでのような護送船方式の恩恵を受けられなくなり
さらに金融自由化、リーマンショックなどもあって、他業界同様、生き残りをかけて競争をしなければならなくなりました。
金融マンだからといって、エリートとして一生安泰な生活が送れる保障はありません。

金融業界は信用が重視されるので、どうしても情報の管理が厳しく、
従業員の行動も厳しく監視される傾向にあります。それが、ストレスの原因にもなっているといえます。

ある金融機関で情報漏えい事件が連続してありましたが、こういった事件があるたびに
金融機関の働く現場には情報管理の強化ばかりが先行します。
こうなるとうつっぽい職場をさらに増やしてしまうことが想像されます。

さらに、IT化や業務の多様化、M&A、先般の世界金融危機などで
金融業界に働く人は他の業界に比しても日々過大なストレスにさらされています。

2007年に発表された全米医薬健康調査によれば、アメリカの金融業界にフルタイムで従事する
50歳から64歳までのうち、過去1年以内にうつ病発症経験がある人の割合は9.8%。
これは同じ条件の製造業従事者の2倍以上です。

このように、仕事のストレスが大きい金融業界ですが、
それに見合うメンタルヘルス対策が講じられているかというと、
IT業界と比べれば、遅れているようです。早急の改善が望まれます。

ベンチャー業界のメンタル環境

■ベンチャー業界のメンタル環境

IT 業界、金融業界と、メンタル不調が続出する業界をみてきましたが、3番目にベンチャー業界です。

ヒトがない、カネがない。あるものといえば、1人で何役もこなさなければならない責任と、
終わりが見えないほど膨大な量の作業。

ベンチャー企業といえば、過重な労働の典型です。

睡眠時間を削り、土日も仕事という激務が想像されるベンチャー企業なので、
IT 業界、金融業界を上回る、メンタル不調さを続出しているイメージがあるのではないでしょうか?

意外なことに、ベンチャー企業では、メンタル不調になる人が比較的に少ないと考えられています。

その理由は、まさに仕事の目的意識が明確だからです。
つまり、ベンチャー企業の社員に取って、自分たちは何のために働いているのか、
そして、その結果、将来自分たちはどんなことを成し遂げたいのか、ということが共有されているからです。

経営陣だけでなく、社員もそれを理解してチャレンジをしており、
また社員数が 少ないことがあり、目的意識を常に共有しやすい環境にあります。
ある意味、モチベーションを盛り上げるための、仕組みが自然にできている状況です。

しかし、ベンチャー企業が一定の素晴らしい成長を達成し、成功したといわれる段階になると、
目的意識やビジョンの共有が薄れ、最もメンタル不調が発生しやすい環境となります。

それは既に「ベンチャー」ではなくなったからだともいえます。

ベンチャー企業の経営者や人事担当は、事業が成功、順風満帆なときにこそ、
社内のリソースが最も危機にさらされるかもしれないという現実を常に踏まえ、
社内の「メンタル環境」のチエックを必須として欲しいものです。

いずれにしろ、過重負荷があるはずのベンチャー企業でメンタル不調が少ないというのは、
長時間労働がそのまま、ストレスになるわけではないということであり、
またその職場の「熱いメンタル環境」に、メンタル不調を起こさない大きなヒントがあるようです。

参考
「メンタルタフネス経営」
「メンタルヘルスマネジメント入門」
「IT技術者が病まない会社を作る」
「メンタルヘルス実践ガイド」

 

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