メンタル障害
■メンタル障害
社会人がほとんどの時間を過ごす、ビジネスの時間。
その時間を、ほとんど幸福に過ごせるならば素晴らしいことであり、
まして「フロー」で過ごせれば最高です。
しかし、ビジネスには人間関係があり、
まして職場にはさまざまなストレスの原因に覆われています。
現実には、皆がみな、幸福に仕事をできるわけでなく、
それどころか「不幸」の状態で仕事せざるおえない場合が多いのです。
なんと、従業員数が千人以上の大企業のうち95%以上に
「メンタル不調」による長期休職者がいるとのことです。
「長期休職」ですから重症です。
「メンタル不調」の言葉は、メンタルヘルスの世界でよく使用されます。
しかし「うつ気味だが、持ちこたえて仕事をしている人」から、
実際にうつ病を発症し、休職して、自宅で長期療養している人まで、
同じ「メンタル不調」者とするのは大雑把に思われます。
実際に病気を発症して、仕事ができなくなった方は「メンタル障害」と呼びます。
(精神学会の定義には無関係)
その、企業の「メンタル障害者」が出ることにより、
どのくらいの経済的損失が出ているか観てみます。
経済損失規模
■経済損失規模
一兆数千億円、この数字は複数のシンク夕 ンクが、メンタル不調による休職などにより発生する、
生産性低下の経済的インパクトを見積もったものです。
厚生労働省の「働く人々の健康状況調査」によれば
「職場で強い不安や心配、ストレスを感じる」と 回答した人々の割合は、
毎年60%以上の高い状態で推移しています。
また、精神障害による労働災害件数と訴訟事件による企業への損害賠償請求も増大しています。
80年代のアメリカでは、M&Aなどが盛んに行われ、そのストレスによる経済的損失は、
連邦政府の財政赤字に匹敵する1500億ドル(約一九兆円)であると報じられました。
また、アメリカの企業が、従業員の心の病気で一年間に失うお金は、全体で2300億円になると報告されています
休職者の損失
■休職者の損失
一般論として、休職者の1ヶ月の最少コストは月額50万円、年間600万円以上になります。
これらの内訳としては、給与手当て、社会保険料、代替した派遺社員の増加コスト、
上司や人事の対応管理コストの増分などを合計したもので す。
さらに厳密に加算をしていくと、傷病手当見舞金、医療負担金や、
派遣社員習熟期間の効率低下、バックアップメンバーの残業代などのコストがあります。
実際、別の計算例では、
年収500万円の従業員が
1年間休業した場合の損失額は年間1500万円になります。
(1)発症前の人件費損失(3ヶ月)
41.6万円×3ヶ月=125万円
(2) 休職中の休業手当(1年間)
41.6万円×0.6×12ヶ月=300万円
(3) リハビリ出勤期間(3か月)
41.6万円×3ヶ月=125万円
(4) 代替要員の人件費
41.6万円×12ヶ月=500万円
(5) 上司のフォローに要する人件費
2.1万円×12ヶ月=25万円
(6) 既存社員の残業代+代替要員の教育費
41.6万円×1.25×8ヶ月=416万円
▼1490万円
さらに隠れたコストとして、うつ病の休職者が出れば、
製品出荷遅延などの機会損失、人事の対応コスト、社内調整・手続き、外部連携、
他の従業員のモチべーション低下、業務蛩の増加による業務効率の低下などもあります。
長期休職者は、うつ病などと正式に、産業医に認定されるので、その損失規模がわかります。
しかし、実際はうつ病なのに「体調不良」などの理由で、
頻繁に「欠勤」を繰り返す方の損失額は、なかなか表に出てきません。
また、もしうつ病などでの休職者がいない企業でも、
もし職場にうつ状態が広がっていたら、社員満足度、社員幸福度、モチべーション、忠誠心、
全て低下しているはずです。
そしてその結果、大幅な「生産性低下」が起きているはずです。
アメリカのシンクタンクの、一兆数千億円という損失み積もりは、
この生産性低下によるものを勘案したものでしょう。
早期離職者
■早期離職者
休職者以外に、企業にとって損失になるのはの従業員が辞めてしまうことです。
ある企業での試算によれば、1年以内に離職された場合の損失は、その年収の3倍といわれます。
つまり、年収500万円のの従業員を雇って、1年以内に辞められた場合には、
募集広告、研修など初期投資した分、こらからの採用広告を入れて企業は
1.500 万円の損害があるということになります。
もしその従業員が優秀だった場合、ノウハウも失われます。
病院の例ですが、看護師の早期離職が問題になり、
平均すると新規採用者の13 % が1年以内に辞めてしまうそうです。
アメリカのIT業界における離職回転率ははるか高く、およそ20%。
これは1年間で社員の20%が入れ替わるということです。
その補填のための人材確保はへッドハンターを頼ることが多く、
報酬は、通常年収の2割〜3割なので、ヘッドハン夕ーを通して年収1000万円で人を採用した場合、
会社は一人あたり200万円〜300万円を、別途へッドハンターに支払わなければなリません。
1000人規模の会社なら、従業員のうち年間200人を新たに採用することになります。
仮にその新規採用者の年収平均が500万円として採用の半分を人材紹介業を通すとします。
するとその紹介料だけで年間2億〜3億円以上が発生することになります。
さらに新規採用者には教育やトレーニングも施さなければなりませんから、
そのコストは途方もない金額です。
退職者理由は、転職、結婚、移住、親の介護などの場合もありますが、
メンタル不調、障害が原因であるのは、全体の7割〜8割と推測されてます。
自殺と安全配慮義務
■自殺と安全配慮義務
自殺による死亡は日本人の死因統計によれば,死因の第6位をです。
しかし、15〜54歳までのいわゆる生産年齢(15 ~64 歳) のほとんどの期間を、
5歳間隔で区切って死因統計を算出した場合、全年齢グループで、
自殺による死亡は死因の第1位か第2位を占めてます。
自殺者のうち労働者は約一万人。
メンタル不調に関連した労災請求と認定の件数が、
ともに自殺者が増加傾向にあるということを考えると、
職場うつなどが自殺の原因となってているケースは、決して少なくないと思われます。
実際、産業医の7割が、従業員から自殺に関する相談を受けたことがあるという
産業医科大学からのアンケート調査結果もあります。
2005年に東京地方裁判所は、派遣労働者の過労自殺を認定し、
派遣先の企業に損害賠償金の支払いを命じる判決を下しま した。
これは、企業は正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、親会社からの出向者、
さらにはパートやアルバイトに対しても、
メンタル面も含めた現境整備や対策を講じる責任があるとされたことを意味します。
もし、遺族から損害賠償訴訟があり、その自殺の原因が、
就労中の「メンタル不調」「メンタル障害」によるものとされたら、
その慰謝料は膨大なものとなります。
例
電通過労自殺事件
1億6,800万円
富士保安警備事件
6,294万円
南大阪マイホーム・サービス事件
3,960万円
システム・コンサルタント事件
3,200万円
川崎水道局事件
2,100万円
電通過労死事件は、史上初の最高裁判決であり、
それまで個人の責任に転嫁されがちだった労働者の自殺について、
自殺と業務との因果関係を認め、企業の責任を認定したものです。
本判決は,長時間労働など過重労働をなくするために、
企業が重大な責任を負っていることを明確にしたものであり、
明確化されたのが,企業の「安全配慮義務」と いう言葉でした。
事業主は,従業員がうつ病にかかるような長時間労働に従事させてはならない義務があり、
うつ病にかかった従業員には,単に「早く帰宅するように」と指導するだけでは足りず、
仕事量を軽減したり、休暇を取らせたり、カウンセラーに相談させる等、
具体的な措置を構ずべきであるとするのが「安全配慮義務」です。
「安全配慮義務」は、従業員の生命や健康などを守るように配慮する法律的な義務であり、
努力義務ではないので、これに違反すると事業者の 従業員に対する償務不履行になります。
また、労働そのものは、長時間があまりに過ぎると「安全配慮義務」違反になるが、
長時間でなくても、嫌な仕事、辛い仕事を、無理やり押し付けるのは、
「強いストレス」となり「メンタル不調」を呼ぶ原因となるので、
企業は「安全配慮」しなければならないでしょう。
また、川崎水道局事件は、長時間労働が原因ではなく、職場のイジメが原因の自殺でした。
集団パワハラともいえます。
企業は、もしその職場に「ハラスメント」があり、それを放置していると、
「安全配慮義務違反」になります。
このようになってしまった場合、慰謝料はもちろん、
担当者の労働損失日数、訴訟対応費用、再発を防ぐための対策費用も加わります。
労働損失日数
■労働損失日数
従業員5000人規摸のある大企業で、この5年間、精神障害による休職者が増加し
労働損失日数が約2000日から8000日へと4倍になりました。
仮に一人一日当たりの遺失利益を2万円とすると、
その経済的損失は、4000万円から1億6000万円へと 増えたことになります。
当事者のそうした損失利益に加え、職場の上司・同僚の負担増に伴う事故やミスの増加、
モラルダウン、CSR (企業の社会的貴任)への影響、
さらには機密書類の漏洩、イ ンターネットへの書き込み、顧客へのサービスの低下によるトラブルの頻発、
創造性、企画力の低下等の、間接的損失まで入れて計算すると大変な金額となるでしよう。
カナダ.ストレス研究所 は、ストレス対策を怠ることに伴う最大の経済的損失は、
企業の成長力低下であると指摘しています。
「不安」な中小企業
■「不安」な中小企業
厚生労働省が、大田区と千代田区の中小企業87社の社員を対象に実施したアンケート結果があります。
「自殺を考えたことがあるか」という問いに、10.3%の人が 「ある」と答えました。
また、「過去一年以内に、実際に自殺を試みたことがあるか」という質問に対しても、
「ある」という回答が2.2%もあったということです。
さらに、各事業場の健康管理担当者への調査では
「メンタルの問題で休業している社員がいる」事業場は全体の14.5%、
「過去1年以内に自殺未遂者が出た」という事業場も7.3%にも上っています。
(大企業が95%で中小企業が14.5%という数字の差は、大企業が圧倒的に社員数が多いからと推定できる)
「メンタルヘルス対策は必要」と回答している事業場が72.7%と高い割合を示してますが、
実際に「対策を施している」のは23.6%にすぎません。
これは、非常に中小企業にとって、危険な数字ではないでしょうか?
メンタル不調がメンタル障害になり、損失になるのは、中小企業にとって大きな痛手です。
大企業のように、産業医や専任の担当者を置く余裕がない、中小企業のメンタルヘルス対策は、
とにかく早急に「予防」に重点をおかざるおえないでしょう。
関連ブログ
メンタル不調が厳しい業界
https://japan-business-flow.com/well-being-blog17/
参考
メンタルヘルス実践ガイド
メンタルヘルスマネジメント入門
メンタルタフネス経営
IT技術者が病まない会社を作る
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