従業員満足度(ES)と従業員幸福度(EH)
■従業員満足度(ES)と従業員幸福度(EH)
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)という指数があります。
給与や労働時間など、待遇、人間関係、設備など、労働環境などに対する、満足度を数値で表すものです。
従業員のモチベーションアップや、定着率の向上に繋がると言われてきました。
その向上に向けた取り組みは日本国内において積極的に行われてきました。
これは、その先から行われていた、顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)の追求が、
各企業、当然のようになり、それだけでは競争に打ち勝てないとされ、始められたものです。
ESが高いと、CS向上に貢献し、業績の向上に結びつくと言われてきました。
しかし、ESを向上させても、業績に寄与するのはほんの一時的なもので、すぐに効果が落ちてしまう企業が増えてきました。
そこで新たに提示された指数があります。
従業員幸福度 (EH:Employee Happiness)です。
従業員の幸福度を、数値化する試みです。
アメリカでは、CHO(Chief Happiness Officer)という従業員の幸福度を高める役職を設置し、
企業の業績を上げようという会社が増大しており、CHOコンサルティング導入後、生産性向上、
社員の離職率ダウン、定着率がアップした会社が続出しています。
このわずか3年以内に従業員の健康と幸福投資増額予定と答えた企業は(38→81%)と2倍以上になりました。
現在、日本ではSDGsと並び、「働き方改革」が企業経営のメインテーマの一つになってます。
従業員の労働時間短縮が大きな課題になり、生産性を維持しながらそれをどう実現するのか、悩む企業は多いことでしょう。
そんな中、従業員の幸福度をあげましょう、と言われたら経営者や人事担当者はどう思うでしょうか?
一般的には、反発が予想されます。
しかしそれは従業員幸福度(EH)アップが、生産性向上に、密接に結びつく理解が広がってないことによります。
実は、生産性を高めるには、従業員幸福度(EH)をあげなければいけないことがわかってきたのです。
従業員幸福度を上げる経営、それは「Well Being経営」と言われます。
日本国内ではまだまだ浸透しているとはいえませんが、ここ数年、非常に関心が高まっているのは確かです。(図)
それでは、なぜ、従業員満足度の追求では不十分であり、なぜ、従業員幸福度追求が必要なのかを解説していきます。
従業員満足度(ES)とは
■従業員満足度(ES)とは
これまで取り組まれてきた、従業員満足度追求とは、どれだけ働く環境の整備ができているかに注目し、
従業員の満足度を向上させようというものです。
その向上のために、何が行われてきたのか観てみましょう。
満足度向上のために必要なことは、まず先にマイナスを減らすことからです。
それは、健康管理からです。
診療所を作り、健康診断を定期的に行い、特定保険指導など行います。
メンタルヘルス維持のために、産業心理カウンセラーを導入して、
ストレスチェックを行い、調子が悪ければ産業医と面談したりします。
これは、心身の健康を維持することに企業が取り組んできたことであり、
戦前の職場の劣悪な環境と比較したら、素晴らしい進歩ではあります。
さらに汚い職場をあちこち清潔にしたり、電話機、パソコンなどOA機器を増やし、
社員食堂のメニューを増やし、味を向上させたりして、企業は、従業員の満足向上のために頑張ってきました。
大企業は、関連会社をたくさん作り、社長や部長、課長を激増させ、
なるべく多くの社員に肩書きを与えることで、満足感の維持に努めてきました。
当然、給料やボーナスを上げるのも、その施策のひとつです。
労働条件、給与や職場の設備など、わかりやすく、数値や文字で目に見える
「客観的指標」を基にして数値化を行うので、その労働環境が、理想とされる状況の数字と、どれだけ近いかわかります。
しかし、現実には、その環境に対して従業員がどのように考えているのかという視点がなく、
実際の従業員の満足度が測れていないのではないかと、疑問視されるようになってきました。
そこで登場したのが従業員幸福度(EH)という新たな指標です。
従業員幸福度(EH)とは
■従業員幸福度(EH)とは
従業員満足度は、労働環境の充実度を表したものですが、従業員幸福度は、従業員自身の心の幸福度を表してます。
仕事環境は整っているのに、従業員の生産性が向上しないどころか落ちてしまうことがあります。
例えば、精神的なストレスが高い労働環境で、仕事内容がつらいと感じ、生産性が落ちていても、
給与が高いと従業員満足度は高いと、評価されてしまう場合があります。
そこに従業員満足度の限界があります。
実は、従業員満足度とは、ほとんどが外部的な職場の環境と、労働条件の整備度であり、
真の意味での従業員「満足度」を保証したものではなかったのです、
実際にその環境において、従業員が心の中でどのように感じているのか、
「従業員満足度」政策だけでは測れないことがわかってきました。
満足とは、心が少しでも満たされることなので、会社設備や給料、役職だけで心が充実できるとは限りません。
仕事に、楽しさや、やりがいを感じることが出来ているのか?
単純なことですが、意外に企業は従業員のその点を、あまり考慮してません。
会社側としては「給料を払っているのだから、嫌なことでも真剣に取組むのは当たり前」
という姿勢であり、従業員も嫌々ながらも納得して仕方なく従う。
しかしそれでは、労働は行われても生産性は上がらないのです。
幸福度が増えれば、仕事に対してのモチベーションが上がります。
モチベーションが上がることで、積極的に工夫し業務改善を行い、パフォーマンスの向上につながります。
楽しさや、やりがいがあれば、欠勤や離職が減ります。
幸福度が上がれば、従業員は積極的な気持ちで仕事に取り組むことができ、さらに幸福度が上がっていきます。
アメリカの研究結果で、幸福度が高い従業員の創造性は、
そうでない従業員に比べて3倍も高く、生産性も31%高いという結果が出ています。
笑顔で楽しそうに仕事をしている人が増えてくれば、他の人にも広がります。
幸福感は伝染することがわかってます。
2種類の幸福度
■2種類の幸福度
幸福学の定義で、2種類の幸福感があるとされてます。
単純にいえば、長く続く幸福感と、長く続かない幸福感です。
それは、会社においては「地位財」「非地位財」と分類される、会社で得られる「財」への幸福感です。
「地位財」とは、役職、給料です。
従業員はこれが高くなれば、もちろん喜びを感じるのですが、自分より高い人がすぐ気になり、
その状況に慣れてしまうと、すぐに「上」を求めるので、その喜びは長続きしない傾向にあります。
「非地位財」とは、心の満足、幸福感です。
ここでは、家庭の幸福というより、職場の人間関係や仕事の内容で得られる幸福感です。
高い役職や給料とは関係がありません。
「地位財」は、他人との比較で得られる幸福感。
「非地位財」他人と比べなくても喜びを感じられるものです。
「地位財」は長続きしづらく、「非地位財」は長続きする幸せと言われます。
友人が自分と同じように職場での人間関係がよくても、それと比較して自分の幸福度が下がることはありません。
つまり、従業員満足度は、「地位財」を従業員に与えるものだったのです。
そして、従業員幸福度は、「非地位財」を従業員に与えるものです。
従業員満足度は、従業員のモチベーションアップの維持には不足であり、
従業員幸福度追求こそ、モチベーションアップの維持に不可欠であることがわかります。
あるGoogleの例をあげましょう。
業績トップの従業員たちに、ドルで数百万レベルの額のボーナスを支給していました。
すると、従業員にお金をもっと稼がないと思わせてしまい、報酬目当てで働くようになりました。
報酬目当てで働くのは、普通はおかしなことではありません。
しかし、もともとGoogleは、社員に幸福になってもらうために高い報酬を出したのに、
従業員の幸福度はなかなか上がらないのに注目しました。
方針を変更し、高い成果を挙げた管理職に、報酬として、魅力的な「人生の経験」」を与えることにしました。
優秀な社員仲間と伴に過ごす、豪華なバカンス旅行です。
その仲間との親密な時間は、素晴らしい幸福な時間となりました。
Googleの副社長、CHOのラズロ・ポックは「社員仲間と共に過ごす経験は、
その費用の10倍の金額をボーナスとして支給した場合よりも、貴重で素晴らしい価値でした」と述べました。
これは、従業員にお金ではなく、幸福経験を「支給」する方が遥かに素晴らしいということです。
地位財」の支給ではなく「非地位財」の支給です。
そして、従業員幸福度アップは従業員満足度アップより、遥かにコスト効率がいいともいえます。
モチベーションアップのためにも、そしてコスト面でも、従業員幸福度アップを進める方がいいことずくめです。
しかし、実は、従業員満足度アップでも十分なタイプの従業員もいるのです。
「追求者」と「満足者」
■「追求者」と「満足者」
幸福学で、人を「追求者」と「満足者」に分ける考え方があります。
「満足者」という表現は、ピッツハーグのカーネーメロン大学の教授などをしていた
ハーバード• A •サイモンという経済学兼社会学者により、1950年代に考案されたものです。
「満足する」というのは、目先の納得のいく選択を、完璧でなくてもするということです。
とりあえず満足できるズボンを買うか、それとも数千本あるズボンの中から完璧なジーンズを探すのに時間を費やすか?
「満足者」が今の状況に満足する傾向が高いのに対し、反面「追求者」は自分の状況を常により良くしようと努力します。
コホート研究によると、「追求者」が賃金やキャリア、物質的なものについてなど、
生きる上で長期的な事柄について常に状況をよくしようとするのに対して、「満足者」は完璧でない事柄にも満足しようとしがちです。
つまり、「追求者」か一時的に物質的なもので満足しても、長期的な進歩を求めるので、精神的な充実も求め始めます。
しかし、「満足者」は、目先の物質に妥協して満足します。
つまり、「満足者」にとっては、従業員満足度アップの施策でもいいということになります。
しかし、企業にとって「満足者」タイプばかりの人材が揃うことが本当にいことでしょうか?
いずれにしろ、これからの企業経営は、CS追求、ES追求、EH追求の流れ、
つまり「Well being経営」になっていくのは必然であり、取り入れないと生き残れないと言ってもいいでしょう。
「Well being経営」を取り入れる企業が増えてくれば、企業の業績アップ、
日本全体の生産性アップへの貢献はもちろん、毎年さがり続けている
「世界幸福度ランキング」の日本の順位を、逆に向上させることができるのではないでしょうか?
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